私たちは普段ふたつの眼を協調してものを見ようとします。これは赤ちゃんのときから育まれてきた能力で、距離感、空間認識などを把握し、私たちが行動する上で非常に重要な眼の機能です。この両眼のチームワークになんらかの不均衡があると、視線をうまく一点に集められず、目標物が二重に見えたりすることがあります。この時、脳は二重に見えることを避けようとして片方の眼から来る情報を無視しようとすることがあるのです。これが抑制(suppression)で、いわば脳の防御プロセスといえます。つまり、抑制により目標物は二重ではなくひとつに見えますから、とりあえず一件落着となるからです。
目標物はちゃんとひとつ見え続けていますから、片眼が抑制を起こしていても私たちはまず気がつきません。しかし片眼だけで目標物を見ていることになり、正確な立体視、つまり3D映像の質は著しく低下します。ボールやその他の目標物との距離感を的確に眼で捕らえなくてはならないスポーツ選手の眼では、気づかないうちに片眼だけでプレイしていることになり非常に不利です。実際、多くのスポーツ選手がこういった問題で成績を落としているのです。つまり、スポーツで抑制はタブーです。もちろん日常でも、抑制は視野を狭め、眼の疲れを誘発したり、からだの動きに影響を及ぼしたりします。
では、抑制が起こっているのを認識することはできないのでしょうか?
ふたつの眼が正しく働いているときに起こる正常な二重視〜ものが二つ見えること−を生理的複視といいます。
生理的複視は簡単に体験できます。
- 写真のように、片方の人差し指を顔から20センチ、もう一方の人差し指を30センチぐらい離して立ててみてください。
- 顔に近い方の指をじっと見つめてください。そのままその指から視線を離さないで、もう一方の指をぼんやり意識すると、その指は二重(二本)に見えます(図1)。これが生理的複視です。つまり、両眼の視線は近い方の指に集まっているので、その地点よりも遠くにあるもう一方の指は脳で二重に認識されるのです。これは正常な現象です。
- 今度は遠い方の指へ視線を移してみて下さい。近い方の指が二重(二本)に見えます(図2)。視線は遠い方の指に集まっているので、その地点よりも近くにあるもう一方の指は脳で二重に認識されるのです。
- 再び近い方の指に視線を移し、片眼を閉じてみましょう。右眼を閉じると(図3)のように、左眼を閉じると(図4)のように、遠い方の指が1本消えてしまいます。
- 抑制が起こり片眼だけで見ていると、ちょうど片眼を閉じた状態と同じように片方の指が消えてしまうわけです。つまり、生理的複視を利用すれば、自分の眼に抑制が起こっているときすぐにわかるわけです。
アチーブのひもとひもに通したそれぞれ3つのビーズを両眼で見つめることにより、ふたつの視線がちゃんと協調しあって働いているかを認識することができます。しかも、抑制が起こっているとき、それがどちらの眼であるのかも‘一目瞭然’です。
アチーブにより、いつも両眼をバランス良く使い、距離感を読んだり空間認識を正確に把握したりする習慣を身につけましょう。
<注意>アチーブの使用は眼が健康な方のみが対象です。斜視や弱視、その他眼疾患のある方、その疑いのある方は使用できません。また、眼精疲労、頭痛、複視(物が二重に見える)などの症状がある場合は、かならず眼科医に相談してください。